第206章 隔意
「辛くなったら、いつでも呼んで。なんだってする。どうやっても、駆けつけるから。ねぇエレン、あなたが大事。あなたを信じる。あなたを――――……愛してる。」
「――――ただの女の、ナナとして……か?」
「ううん。私がただの女になるのは――――……エルヴィンと、リヴァイさんの前でだけ。」
「………やっぱそうかよ。」
「そうだよ。――――あなたは、私の愛する……もう一人の弟。」
エレンの頭を再び撫でると、エレンは眉を下げて一瞬、どうしようもねぇな、と……笑った。
そして私を捕まえていた腕を解いて、足元に落ちた私のジャケットを拾った。私の胸元を隠すようにジャケットを被せて、私に背を向けた。
「――――俺は俺のやり方でお前らを守るから。」
「――――うん。」
「――――死ぬなよ、ナナ。」
「――――うん。」
「――――頼むから……っ………。」
「――――なに……?」
「――――――……どうか兵長と……ずっと、幸せに生きて……。」
振り返ったエレンは、泣きそうな顔で笑った。
エレンに見えているものは私にはわからないけれど……
その一言は、まるで彼がもたらした結果のその先の未来に……自分はいないような言い方で……
胸の奥が、抉られたように――――痛んだ。