第206章 隔意
ずん、と小さな地響きを立てて、飛行船はパラディ島の大地へ着陸した。
あらゆる荷が降ろされる中、そっと……サシャの遺体が運び出された。飛行船に遺体を積み込む余裕もなく、故郷から遠く離れた地で朽ちていく、そんな仲間もいる。
――――これが、戦争なんだと……実感をしたくもない現実が容赦なく襲い掛かる。
サシャに付きそう104期のみんなは、俯いて泣いていた。
私の部屋で何度かお菓子を食べながら、生まれた地の言葉を教えてくれた。頑なに自分自身の中身を見せないよう振る舞っていた彼女が、自身の言葉で……話してくれるようになった。
狩りのこと、民族のこと……たくさん教えてくれた。
サシャが最期に言った、『あなたのままでいいって言ってくれて、嬉しかった。』――――その言葉を自分にも言い聞かせる。
私は私のまま、やるべきことをやる。
「――――サシャ……どうか、安らかに……。」
遠目に運ばれて行くサシャを見つめていると、私はふと陰に覆われた。すぐ隣、見上げるとサッシュさんが立っている。
「サッシュさん。」
「――――………。」
サッシュさんは私に目線を落とさず、サシャの方を見つめている。
「さっきはありがとうございました。」
「――――殺したいと、思ったか?ジークを。」
「――――!」
「――――俺は思った。だからあの時、ライナーを……殺そうと思った。」
「……それは……復讐、ですか。」
「そうだ。あいつらがこの島に攻め込んで来なけりゃ……多くの仲間が死なずに済んだ。」
――――そうか、だからあの時……、自分はここに戻れなくても、ライナーを殺そうと、したんだ……。
……私と、同じ……。