第204章 開戦④
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どうやら兵長もジークを連れて飛行船に退避完了したようだ。ミカサがエレンを連れて乗り込んだのも見た。
「――――飛行船を撃ち堕とせるような兵器がもうないか、担当エリアを確認が出来た班から退避だ!!」
分隊長として作戦を完遂するための最後の指示を出す。
俺の指示の元、仲間が一斉に飛行船の下で銃を構える敵兵を銃撃。と同時に火器兵器の有無を確認していく。
――――そんな中俺はほんの両手の刃に力を込めてそれを見下ろしていた。
――――ライナー……鎧の巨人。
倒れ込んで動かない。手には……エレンから引き剥がした顎の巨人を抱えている。顎の巨人ももう、エレンに捥がれた手足を修復するのに精一杯なのかぴくりとも動かない。
―――わかってんだ。逆恨みだってことは。
――――でも……。
「――――そもそもお前が壁を……破壊しなきゃ………。」
――――ウォール・マリアに巨人は侵入しなかった。
壁の奪還を急がなきゃならない状況も生まれなかった。
――――リンファが……死ぬことも……無かったかもしれない。
こいつに止めを刺すとしても、無抵抗じゃないだろう。そうこうしている間に飛行船は行っちまう。
――――俺は、帰れなくなる。
だけど……今ここでとどめを刺しておけば――――鎧の巨人がどこかのユミルの民にまた生まれ変わるまで、その力は俺達の島を攻める戦力として使えない。
殺しておけば……敵の力を削げる。
ほんの一瞬のはずだったが……粉塵が舞う強風が吹き荒れる中で、俺は気付けば……なんとかしてライナーを殺す口実を探していた。
心は正直だな。
結局、リンファを失った……多くの仲間を失った理由を誰かのせいにして……そのどうしようもない負の感情を処理しようとしてる。
――――いいさ、かっこ悪くても。それでも。
「――――リンファへの弔いとしてせめて俺の手で殺―――――………。」
両手の刃を握りしめて、ライナーの方へとアンカーを放とうとしたその時、俺は聞いた。
――――リンファの声を。