第198章 不和
団長室を出た瞬間、隣の部屋の扉が開いて――――、私は思わず、笑ってしまった。
「――――あ?なに笑ってやがる。」
「――――いえ?待ってましたか?私のこと。」
くすくすと笑いながら尋ねると、リヴァイさんは小さく舌打ちをして斜め下に目線を落とした。
「――――お前が帰って来てから、お前の淹れる紅茶に慣れちまってんだ。」
リヴァイさんは扉を閉めて、こちらに歩み寄ってくる。
「はい、じゃあ眠る前に紅茶をお淹れしますね。よく眠れるように、香りの良いものにしましょうか。それともいつもみたいにブランデーを……。」
言い終える前に私の目の前に立つその愛しい人。
この場所で、この距離で……これまで何度あなたを見つめただろう。切なくて胸が痛くなることもあった。怖いと思ったこともあった。会いたくないって思ったこともあった。
――――今はもう、なんの迷いも怖さもない。
私を見つめるそのダークグレーにも黒にも見える瞳を、見つめ返す。
「紅茶はストレートで、いつものでいい。」
「……いいんですか?眠りやすくなりますよ。」
「――――俺の安眠剤がここにいるからな。」
リヴァイさんの右手が力強く強引に私の腰を抱き寄せた。
――――ここは廊下で……誰が見てるか、わからないのに……という思いから、わずかにのけ反った私の上体を追うように覆いかぶさって、吐息が重なったかと思ったその瞬間にはもう、すでに舌を抜かれそうに喰われてしまっていた。
――――そうだあなたはいつもそう。
私が逆らえないのをいいことに……所かまわず迫って………強引で乱暴で厭らしくて……でもその想いが全部流れ込んでくるような、とても幸せなキスをくれる。
長いキスの後、リヴァイさんは私の手を引いて執務室に押し込んでから、厳重に――――――鍵をかけた。