第198章 不和
「なるほど。それは素晴らしい志ですね。――――そして、あぁそう。彼が同じく義勇兵の……オニャンコポンです。ほら、挨拶して。……オニャンコポン?」
イェレナが少し下がって、隣にいたオニャンコポンの肩をとん、と叩いた。オニャンコポンは呆然とした表情で、ナナを見つめている。
「――――オニャン、コ……さん?」
ナナは動揺しながら、一言も発さないオニャンコポンを見上げるように言葉をかけた。
そしてようやくオニャンコポンはハッとした表情で、我に返った。
「えっと、いや、オニャンコポン、です!!ナナさん……、ずっとお会いしたいと思っていました!」
「――――オニャンコ……。」
「ちょっ、兵長と同じこと言わないでくださいよ。オニャンコポン、です。珍しい名前ですから……発音しにくいかもしれませんけど。」
オニャンコポンは頭の後ろに手をやってはははっ、と軽快に笑って握手を求めて手を差し出した。
ナナはその手に応じて握手をしながら、まじまじとその手を観察して……好奇心を滾らせた目でオニャンコポンを見上げた。
「――――あの。」
「はい?」
「おっ、オニャンコポンさんは……!どうして、肌が黒い、のですか……?!」
「あぁ……それは、俺達を創った神が……きっと、色んな奴がいた方が面白いって、思ったからじゃないですか?」
オニャンコポンが発したその “神” という言葉に、目を細めてイェレナが苛立った表情を見せた。
――――あくまでイェレナにとっての神は……ジークだと言いたいらしい。
……とんだ心酔具合だな。
「――――神さま……?」
「ええ、まぁ……色んな考え方がありますけどね。俺から見れば……ナナさんはなぜ白銀の髪で……そんなに美しい海の色の瞳をしているのか?と思いますよ。」
「――――てめぇオニャンコ。なにどさくさに紛れて口説いてやがる?二度とナナを拝めねぇようにしとくか?」
「えぇっ!!ウソですよ、冗談ですって……!いや、あの美しいってのは本音ですけど……っ、そんなことでそんな脅さないでくださいよ兵長……!」