第198章 不和
「初めてお目にかかります。この度団長補佐として復帰をしました、ナナです。どうぞ宜しくお願い致します。」
ナナの噂を聞きつけて会いたいとほざいてきやがったイェレナとオニャンコポンに面会すべく、トロスト区の調査兵団支部に赴いた。その会議室で、ナナは律儀にぺこりと深く、頭を下げた。
「これはこれは……ずっとお会いしたかったです、ナナさん。お噂はかねがね。私はイェレナ。」
イェレナはナナに向かってすっと手を差し出し、握手を求めた。ナナは一瞬ためらうような表情を見せたものの、その手をとって、握手を交わした。
「――――兵長が隠したがる理由が、分かりましたよ。こんなに綺麗な人だなんて。――――そりゃぁ得体の知れない外から来た輩の目の届く所に置きたくないはずだ。」
「――――………。」
ナナは微妙な顔で俯いた。
「でもなぜ急にお戻りになったんですか?」
「――――それは……、どうしても調査兵団の行末を、私が見届けたかったからです。――――元団長の想いも受け継いで……私はそこに立ち会いたいから。」
――――ナナは嘘をつくのが、上手くなったなと思う。信じさせたいときほど射るように相手の目の奥を捕らえて放さない。
ナナの至る所にエルヴィンの仕草や言葉選び、考え方などが……受け継がれている。
この得体の知れないであろうイェレナにも臆せず、その目をじっと見つめて言う。
―――まぁあながち全部嘘ってわけじゃねぇが……。
ナナも警戒している。イェレナのことを。
俺はナナがガキでも人質に脅されて戻って来たんじゃねぇかと思っていたが……、ナナのこの様子を見ると、イェレナたちじゃねぇのか……?
まぁイェレナが糸を引いて、誰かを動かしている可能性だってある。
――――見逃さねぇ、一寸たりとも。