第196章 現実
船の汽笛が鳴って……遠ざかっていくパラディ島を眺める。
こうして見てみると……俺達があんなに必死に中で足掻いていたあの壁も……こんなに小さくて……俺達がかつて目指した “自由” というのは、ごく小さなものであって……ここは、世界から隔離された島に過ぎないんだと、理解した。
「うぉぉぉお!!見ろよサシャ!!俺達の島、ちっせぇなぁ!!」
「あっ?!見てくださいコニー、アルミン!!変な生き物がいますよ?!?!食べられますかね?!?!」
「サシャ、あれはウミガメだって!」
いつも通りサシャとコニーとジャンはぎゃあぎゃあと船のあちこちを走り回ってははしゃいでやがる。
テンションがおかしすぎて誰か船から落ちるんじゃねぇかと、アルミンが走り回って奴らの世話を焼いている。
エレンはまた何の感情もねぇ顔で……ただ遠くを見つめていて……、その横には、ミカサが寄り添っていた。
今回のこの壁外どころか島外調査は……編入者を除く、元から調査兵団にいた104期の面々と、俺とハンジのみの少人数に留めた。
――――万が一良からぬ事を考えるような奴が紛れ込んでしまうと厄介だからだ。
俺は船の甲板で海を眺める。
どこまでも続く水平線は、あの日……ナナと見たそれと同じだ。一つ違うのは……あの日のようにただ眺めるだけじゃなく、俺達は今……マーレ大陸に潜入するためにパラディ島のエルディア人であることを隠して、そこを目指している。
「――――海の色がまるでナナの瞳だ。ナナに会いたい。抱きたい。」
俺の横で謎に俺の声を真似ているつもりなのか、ハンジが呟きながら同じように水平線を見つめた。
「ね、当たってた?リヴァイの心の声。」
「……そんな四六時中ナナのことばかり考えているわけじゃねぇ。」
「いや8割くらいは考えてるでしょ?」
「――――………。」
「図星!!」
ハンジは俺の背中を叩いてケラケラと笑う。