第195章 決意
――――その日は、とても空が綺麗だった。
薄くのびたような雲は、もしかしたら夜になれば雪を降らせるかもしれないと、そう思いながら客人を待った。今日は女王としてではなく、孤児院の責任者として、懐かしい人の弟さんをお迎えすることになっている。
「――――ロイ・オーウェンズ……、ナナさんの、弟さん。」
一度だけ遠目に見たことがあるかもしれない程度。
この孤児院が出来た時からずっと変わらずオーウェンズ家は出資をしてくれている。その多額の出資状況から、この孤児院の運営状況や出資頂いたものの使い道を細かく説明、報告している。
ボルツマン家と袂を分かってから、これまでほどの財的余裕もないはずと噂に聞くのに……、孤児院の運営に手を差し伸べてくれるのは、そこにリヴァイ兵士長の意志があって……リヴァイ兵士長を愛していたナナさんの意志も、少なからず反映されているのかなと思うと少し嬉しくなる。
ナナさんにはもう、何年も会っていない。
風の噂で……病のために王都の実家に戻って療養をしていると聞いた。そうだ、だっていつもの兵団会議にも………ナナさんの姿は見つけられなかった。ナナさんの体調が万全なら……例えエルヴィン団長からハンジ団長に代わったとしても、きっとその側で調査兵団を支えているはずだから。
「――――ナナさん、無事だといいな……。」
弟さんに、それとなく聞けそうなら聞いてみようか……と思いながら応接室の窓から外を見ると、馬車がついた。
そこから降りて来たのは見目麗しい銀髪のうら若き青年と、小柄でブラウンの髪を下ろした優しそうな雰囲気の女性。そうか、助手兼秘書も一緒に来ると言っていたっけ。
私は2人を急いで迎えに行った。