第194章 蜜語
「ナナ様、お手紙が来ていますよ。」
「ありがとう。」
私はハルから受け取ったいつもと同じ真っ白な封筒を開いて、その愛しい筆跡から……文章の内容だけでなく、心の動きまでも感じ取れないかと、隅々までその手紙を見つめ、大事に読む。
「――――パラディ島と友好関係を築けそうな国を探すため………“ユミルの民保護団体”が参加する国際討論会に行く……。」
リヴァイさんからの手紙には、ついに調査兵団のみんなが……海を渡って、外の世界に渡る事が書いてあった。
これまで定期的に送ってくれた手紙の中で、ジーク・イェーガーからの義勇兵を通した接触から始まり……その策に乗る形になったこと、ジークが密かに繋がっていた友好国からの物資支援で完成した港の話、鉄道の話……そして、パラディ島の平和を守るために行うべき施策のことなども逐一、情報を教えてくれた。
ジークが提案してくる施策は……犠牲が少なくて済む方法なのかも、しれない。だけど……ヒストリアが犠牲になって……、レイス家がそうしてきたように、結局は巨人の力に頼ってそれを継承し続けて……その為に子を産み続けるなんて……そんな、惨いことがあるだろうかと……憂いた。
でも同じように考えてくれたのだろう、ハンジ団長を中心に、調査兵団はその施策に飛びつく前に最善を模索すべく、今回の運びになったそうだ。
ヒィズル以外にも友好関係を増やして行けるように、まずは相手を知って……自分達を知ってもらおうと。
―――巨人対人ではない。
人対人だからこそ、話し合えるんじゃないか。
――――私も抱いたその甘っちょろい理想論を、諦めずに追及する彼らが……心より誇らしい。