第192章 回想③
「――――それでね、あなたの胎動を初めて感じたその日に、思ったのよ。『早く会いたい。』『なんて愛しい。』って。生まれた時はそれはもう、嬉しくて……。天使だって、思った。ハルがね、あなたを大事そうに抱っこしてくれたの。今でも鮮明に覚えてる。」
「――――おかぁ、さま……っ……。」
私はぐしゃぐしゃに泣きながら、お母様に抱きついた。
――――こんなにお母様に弱音を曝け出して、ぐしゃぐしゃな顔を見せたことも……なかったかも、しれない。
「あらあら珍しい……、辛かったわね。ごめんね、側にいてあげられたらいいのだけれど……でも……。」
「――――大丈夫……。」
「――――あなたの側にはいつも、リヴァイさんがいてくれるんでしょう?」
「――――うん………!」
「またリヴァイさんにありがとうって言わないと。私の娘を守って、こんなに愛してくれてありがとうって……。」
お母様が私の頭を撫でる手が優しくて……、そうだ、妊娠が分かった時に戸惑ったとしても……、お母様に私はこうして愛されていて……、私が欲しい安息をこうして与えてくれて……。
だからそうだ、きっと私もこんな風に……なれるって、少しだけ心が軽くなった。
――――早く帰ってあなたに会いたい。
やっととびきりの笑顔を向けられる気がする。
私をずっとあの部屋で待たせて……ごはんも食べないって怒るなら……食べさせてって……眠りに落ちるその時も側にいてって……たくさんたくさん、我儘を言ってやるんだから。
いつもの茶葉屋さんでリヴァイさんの好きな茶葉を買って胸に大事に抱いて、いてもたってもいられずに……私は夜中に馬車を走らせてトロスト区に戻った。