第190章 回想
「闘病しながら産みます。お母様にもちゃんと説明して……万が一私に何かあっても、この子が生きていけるように……ちゃんと、整えます。ボルツマンさんにもご迷惑をおかけすると思いますが……、どうか、どうか宜しくお願いします。」
「―――分かった。リカルドの墓前で、可愛い孫の顔を見せてやろう。もちろんナナ、お前が抱いていくんだぞ。気をしっかり持って、生き抜けよ。」
「はい……っ……!」
病魔とはいつも未知で。
どんな未来が待ち受けるのかはわからない。この子の命も、私の命も……でも悲観ばかりしない。
泣かない。
強くなるんだ、母になるんだから。
ボルツマンさんは即刻の入院を提案したけれど、できうる限りハンジさんの側で、私の外の世界の知識を役立たいという思いを汲んで投薬も調整をしてもらって……譲歩してもらった提案を飲んで、夏の終わりに王都に戻ってそのまま入院した。
――――妊娠の事実はハンジさんとリヴァイ兵士長、サッシュ分隊長にだけ話した。
あの時のサッシュさんの……嬉し泣きは、一生忘れられそうにない。
「――――サッシュさん……私実は……、妊娠、していて……。」
「へっ?!?!」
兵舎のサッシュさんの部屋にお邪魔して、目を合わせられないまま歯切れの悪い言葉を並べた。
「あの……それで、夏の終わりには王都に帰ることになっています。大変な時期に本当に、申し訳な……」
言いかけた私をがばっと抱きしめて、興奮冷めやらぬ様子で私の頭をいつもより強く強く、ガシガシッと撫でまわした。