第189章 鎹
「――――リヴァイさんの鼓動は、生命力が溢れてる……。」
あの地下室で過ごしたナナとの夜。
素肌を合わせて、到底寝具とは呼べない狭いマットの上で俺の腕に抱かれながらナナは言った。
イき果ててトんだ後だからか、朦朧とぼんやりとした様子で、俺の胸に頬を寄せながら、空中に向かって手を伸ばして、人差し指で何かを描いた。
「――――Live………。」
「なんだそれは。」
「――――外の世界の古の言葉……Live、生きる……という意味です。」
「Live……。」
「リヴァイ、と発音が似ています。――――だからもしこの言葉でリヴァイさんの名前を書くなら……… “Levi” に、なる………。」
「…………。」
――――ああナナは、エルヴィンとこんな話をしながら夜を過ごしていたのかもしれない。そう思うとこの会話も少し癪だなと、ナナの手を捕まえる。
「――――どう書くって?」
俺がナナの手を取って、その文字を教えろと言うとナナは俺を見上げて――――……、とても嬉しそうに微笑む。
「………こうです。」
2人揃って、僅かなランプの明かりしかない薄暗い地下室の天井に向かって、指を運ぶ。
「――――ナナ、はどう書く?」
「ナナ、はね……、こう……。」
「………変な文字だな。」
「……ふふ。聞いたからには、いつか下さいね。その文字で書いた手紙。」
「――――俺は手紙が得意じゃねぇ。」
「知ってます。端的過ぎてわからないことだらけのお手紙を、以前いただきましたから。」
「うるせぇ。」
生意気を言う口をまた塞いで、ナナの細い腰を引き寄せ、その身体を強く抱く。