第188章 発現
――――わかるの、これは戦争で。
殺し合いで、騙し合いで………。
仕方のないことだって、私の狭い世界や、至らない考えでは理解できないことだって、きっとある。
――――なのにどうしても………。
――――私は――――……ジーク・イェーガーを………獣の巨人を………、心の底から憎いと思っている。
これは私情だ。
明らかな私恨。
私的な感情に惑わされてはいけない。
――――リヴァイさんへの返事に、 “ジークを信用してはいけない” だとか、 “やめて” なんてそんなことは書かない。書いちゃいけない。――――きっとハンジさんとリヴァイさんが兵団へ持ち掛けて……ザックレー総統や、ピクシス司令の知恵も借りての決断になる。
私はそれをちゃんと信じられる。
「――――リヴァイ、さん………。」
手紙を抱いて、何とか自分の震えを止める。
憎い。
エルヴィンを返して……………
ミケさんを、ナナバさんを、ゲルガーさんを…みんなを……返して、返してよ……………
これ以上大事なみんなを、エレンを失いたくない。
ハンジさん、リヴァイさん、サッシュさん………みんなに、危険な目に遭って欲しくない。
――――奴が……奴こそが滅びればいい――――………。
――――これまで医者として数えきれないほど、『生きて欲しい』と願った。
生まれて初めて私は――――……、今、ジーク・イェーガーの死を、願ってしまった。
―――――人を憎むということは、こんなに苦しくて……、息が詰まるものなのか。
――――会いたい。
リヴァイさん。
会って、抱きしめて。
そんな汚い感情すら、なんてことないと……人間誰でも持ってる感情だと言って、いつものように髪を撫でてその鼓動を聞かせて………。
『お前がどんな汚い感情を抱いても、人を憎もうとも……変わらず愛してる』と――――……、
『俺が赦す』と、言って………。