第187章 海② ※
翌朝早くにシガンシナ区のリフトを使ってウォールマリアの外に出た。
島全土における巨人の掃討完了はほぼ間違いなかったが、さすがにウォール・マリアの更に外へは民間人は出ることは赦されていない。もちろん事前に団長であるハンジから兵団本部にはうまく任務だと言いつつ申請をしてくれていた。
実際にリフトを上げ下げする駐屯兵団の奴らも、全く気にも止めずに俺達をただの作業のようにリフトで降ろした。
こういう時のための調査兵団兵士長という肩書だな、と思いつつ、降ろされたリフトから馬で駆け出す。
数か月前に調査兵団が使った行路を辿り、海を目指した。
ウォール・マリアの外に一歩駆け出したその瞬間。
ナナは空を仰いだ。
そして眩しそうに、目を細める。
――――地上から上がった時の俺は、きっとこんな顔をしていたんだろうと思いながらそれを見つめる。
「――――どうした?」
「……初めての…… “籠” の外で見上げる空だなぁと……思って……。」
「そうだな。……だが実際のところはまだ俺達は籠の中のままだ。」
「そう、ですね………。」
ナナは少し俯いて、俺が手綱を持つ手にそっと手を重ねた。
「休憩するか?体調はどうだ。」
「全然大丈夫です。最近調子がいいので、お気遣いなく。」
「――――お前の大丈夫は信憑性に欠ける。」
「ふふ、相変わらず心配性ですね。」
「――――大事な女だ。当たり前だろうが。」
「――――………。」