第186章 海
「え――――っとぉ、んじゃ、行こっか!!」
「なんだその締まりのねぇ号令は。ちゃんとやりやがれ。」
「だって苦手だもん、そういう堅苦しいの!」
ハンジのゆるい号令で、久方ぶりのウォール・マリア外の壁外調査は始まった。ウォール・マリア付近に巨人の姿はない。もうここ数か月、壁上の巨人討伐装置の槌が巨人を潰す音がしなくなったとの報告だった。
――――あの髭面やライナー達がまだこの島に残っていて俺達の動きを待っていた……という可能性も考えられなくはなかったが……どうやら杞憂だったようだ。
「お前の読み通りだハンジ。ウォール・マリア内に入っていた巨人が殆どだった。俺達は奴らを1年でほぼ淘汰しちまったらしい。」
「……そんじゃ予定通り、目的の場所を目指すぞ!」
ほぼ戦闘の可能性はない。
ただひたすらに馬を走らせて……エレンが見た記憶を頼りに、俺達はついに――――辿り着いた。
明らかに外の世界の文明を用いて建設されたのであろう壁のようなものが視界に入ってきた。
「――――間違いない。ここの場所でエルディア人は巨人にされた。」
エレンが遠い目で、記憶の中のそれと重ねている。エレンの言う通りにその壁の脇から更に向こう側に回り込むと………俺達の視界が一気に開けた。
「―――――………。」
―――――息を、飲んだ。