第184章 空蝉 ※
「――――おそらく次の壁外調査は巨人との戦闘はない。――――だから、今度こそ壁の向こうの――――……海が見られるかもね。」
「――――ああ………。」
「ナナが一緒に行けなくて残念だなぁ。」
「――――今回行路の安全と、巨人との遭遇の可能性もねぇとわかれば……近いうち、ナナにもせめて海だけは――――見せてやろうかと思う。」
俺が俯きながら零した言葉に、ハンジは少しの憂いを隠した笑みを見せた。
「――――そっか、そうだね!うん、それがいい。ナナとエルヴィンの夢の一歩だったもんね…… “海” を見ることは。――――叶うと、いいね。」
「――――………そうだな。」
―――――ナナ、どうしてる。
泣いてねぇか、苦しんでねぇか。
体は……どうだ?
――――安らかに幸せに、笑ってくれていりゃあ……いいんだが……。
壁外調査が終わってウォール・マリア外の無事が確認できたら……お前を迎えに行く。
見せてやる、お前に。
“海” を。
そこに続くであろう、 “自由の空” を。
「――――ナナ………。」
今日も空を見上げて、遠くのお前を想う。
その大きな目に何を映している?
――――――――会いたい………。