第184章 空蝉 ※
ナナが王都への診察に経った翌々日。
執務を終えて部屋に帰った。
――――あんなに狭いと思っていた部屋が……ナナがいないとこんなに不思議と広く感じてしまうのかと思う。
――――俺は寂しいという感情をちゃんと理解しきれていないと思うが――――……どうやら寂しいと思っているらしい。ふっと息を吐いて兵服から私服に着替えると、トントントントン……と、部屋へと続く表の階段を駆け上がる音がした。ナナならトン、トン、トン、とゆっくりした音なんだが。
――――誰か来たのか?
この場所はごく一部の人間にしか知らせてねぇんだが……と、少し警戒色を強くして、その扉の向こうの気配に気を張った。ノック音がするかと身構えたが、ガチャ、と鍵が開く音がした。
扉が開いた瞬間、息を切らしたナナがはぁっ、と一度息を大きく吐いて、その大きな目で俺を見つめた。
「――――ナナ。帰っ―――――……。」
――――言葉を言い終える前に、ナナは何かに急くように俺に駆け寄って、思い切り抱きついて来た。その伸ばされた両手が俺の首に回されて、ぎゅ、と俺の首筋に顔を埋めた。
「リヴァイさん、リヴァイ……さん……!」
「なんだ。どうした。そんなに急いで……なにかあったのか?」
「――――ううん。」
「――――病が良くない、とか……じゃねぇだろうな。」
「――――いえ、むしろ良い方向です。」
「そうか。良かった。」
「はい。」
「――――なら何をそんなに――――」
「一秒でも早く、会いたかった。」
「――――………。」
「――――こうしたかった。心臓、ドキドキして……あなたのことが好きで、仕方なくて……今、私もあなたも生きていて……肌を合わせてると思うと………幸せで………泣きたく、なる……。」