第183章 白状
「――――嬉しい、ロイ……、良かった……、良かったね……!」
「……エミリーに、振り回されてばかりだけどね……。」
ロイがはにかんで笑う顔が可愛くて、愛おしくて、また強くその腕に抱きしめる。しばらくして、マスターが様子を伺いに戻って来てくれて……私たちを見て、ふ、と小さく笑みを零したあと、ロイに尋ねた。
「ロイ君が頑張ったご褒美に、どんなお酒を作りましょうか?」
そう言ってロイがマスターにお任せで作ってもらったのは……いつもエルヴィンが飲んでいたブランデーを、フルーツとソーダで割ったものだった。
マスターはブランデーをストレートで注いで、私とロイの間に置いた。
「――――エルヴィンも今きっと、君たちの側にいる。これは彼の分だ。」
「――――………。」
「――――義兄さん……。」
私の横に、姿はなくても……きっと彼はいて、私だけじゃなくロイのことまで……きっと、見ていてくれているんだと、そのブランデーの琥珀の中に彼の瞳が映っていたその日を思い出す。
「――――ほんと、自分勝手で……酷い人………。」
私の声と共に一筋の涙が頬を伝う。
あの日の私は答えられなかったから、ちゃんと答えよう。
あなたはきっと私の意志を尊重したい想いと、自分の叶えたい想いとの狭間でまたひどく悩んで、私のことを想いながら……自分の想いを優先したことに対して、言ったんだ。
『………自分勝手な俺を赦してくれ。』
「――――赦すよ。そんな自分勝手なあなたを、愛してるから。」
両目を閉じた瞼にはっきりとエルヴィンが浮かんで――――……、彼は、笑った。
――――私は変わる。
愛する人とこの先をまだ生き抜くために。
――――でも、ずっとずっと私の中にあなたはいる。
あなたが遺してくれたものが、きっと私を強くしてくれる。
「―――――I love you forever……Erwin……」
そしてまた、胸の片翼をそっと両手に包んだ。