第181章 泡沫
「――――あっ、先客。」
兵舎の浴場で頭を洗っている時に、ガラッと背後で扉が開く音がした。頭からお湯をかぶって振り向くと、さっきまで食堂で山盛りの夕飯を食べていたサシャの姿がある。
――――それでなくても女性兵士が4人しかいなくて、そのうちハンジ団長は時々しかお風呂に入らないみたいだし、――――ナナは……、この兵舎を出て、リヴァイ兵長と一緒に暮らしてるらしい。
だからほとんどこの浴場で誰かに鉢合わせることなんてなかったのに。
「―――……入る時間間違ったかと思って、びっくりした。」
「あはは!合ってますよ、今女性兵士の入浴時間です。」
サシャがははっと笑って、体にお湯をかけて私の隣で石鹸を手に取った。その時にちらりと私の身体を見て、驚いた表情で目を大きく開く。
「わぁ!やっぱりミカサはとんでもなく鍛えられた身体してますよね。どうやったらそんなバキバキに筋肉つくんですか?」
「……どうやったら……?ひたすらトレーニングする……。」
「……そんなに強くなりたいんですか?」
「――――強くないと、守れない――――……」
『エレンを。』
私が言ったその言葉にサシャはわざと言葉を被せて、にひひ、と悪戯に笑った。
「――――ヒストリアといいエレンといい、まぁ……ほんきのどきぃ運命背負っちょるからなぁ。」
「―――――うん。」
一瞬言葉の意味が分からなかったけれど、なんとなく……本当に大変そうな運命だなと同情の意を表したんだろうと思い、私は小さく頷いた。
――――最近、少しずつ……サシャが自分の言葉を織り交ぜて話してくれるようになった。