第180章 蜜月 ※
「――――ワーナーさん、私たちのこと、見てるかなぁ……?」
「――――見てるだろうな。きっと………喜んでる。」
「――――本当に?」
「――――ああ。」
「………私が……外の世界に夢を抱いた事を、後悔しそうだとしても……?」
ナナの声が一瞬震える。
「――――お前が外の世界に夢を持ってなきゃ、エルヴィンにもハンジにも……俺にも、調査兵団に……出会ってない。」
「――――………。」
「その方が良かったのか?」
「――――……ううん……。」
「なら後悔するな。この世界が残酷である現実は今であって、過去じゃない。過去じゃなければ変えられる。――――変えてやればいい。後悔せずに済むように。」
ナナの髪を撫でて、諭すように抱きしめる腕に力を込める。ナナは俺の腕の中でふ、と笑った。
「――――……あなたはやっぱり、いつもいつもかっこいい……。」
「お前はいつもいつも可愛くて綺麗で淫乱で神聖だ。」
「――――褒めてます?けなしてます……?」
「両方だな。」
「…………ひどい。」
肌を合わせてお互いの鼓動を重ねても、刻む速さが違う俺とナナの心音はすぐにずれて、複雑に絡み合うように音を鳴らす。
だがふと、口にしたその言葉だけは、ぴったりと重なった。
『愛してる。』
またお互いに目を丸くしてふっと笑ったあと、小さなキスを交わして――――
蕩けるような濃い蜜色の月を横目に、俺達は甘い眠りについた。