第15章 相愛
それからしばらくは山のような書類に再び目を落としていった。おおよその仕事を終えた時には、もう今日が終わろうとしていた。その時、コンコンと部屋の扉が鳴った。
「……リヴァイ兵士長。ナナです。」
思いもよらなかったナナの声。
「……入れ。」
「失礼します………。」
「なんだ。呼んだ覚えはないが?」
「はい………………あ、お茶、入れましょうか。」
「………あぁ、頼む。」
ナナがこの部屋で紅茶を淹れる後ろ姿を見るのは久しぶりだ。ナナが俺の机にカップを置いた。
「まだ、お仕事残っているんですか?」
「……もう終わる。」
カップに口をつけ、香ばしい紅い液体でのどを潤す。ナナは俺の様子をただ見つめていた。その視線がこそばゆい。
「それで。要件はなんだ。」
「あの、なんでもないんです……ただ………。」
「…………。」
「おやすみなさいを、言いたくて………。」
エルヴィンにクソみたいなウォール・マリア奪還作戦の話を聞かされて、胸中穏やかじゃないのだろう。
こいつなりの、甘えか。
ナナの遠慮がちな申し出に、腕を引っ張って距離をつめ、耳元でナナの望む言葉を紡ぐ。
「おやすみ。ナナ。」
「おやすみなさい、リヴァイ……兵士長。」
「……満足か?」
「…………いえ。足りません………」
ナナの顔が女になる瞬間。
ナナは目を閉じ、唇を重ねてきた。俺の首に両腕を回し、何か不安を拭おうとしているかのようだ。しばらくして、ナナがそっと唇を離した。