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【進撃の巨人】片翼のきみと

第176章 処




その日、街は困惑や畏怖の声で溢れ返っていた。

兵団が、この世界の真実を民衆に公表したからだ。特刷された新聞が至る所で配布され、主要都市には兵団が赴いて説明の機会も設けたようだ。





「――――人類を脅かす人食い巨人の正体は人間であり、我々と同じ祖先を持つ民族“ユミルの民”だった。我々の王は100年前にこの壁を築き、巨人の力で民衆の記憶を改竄し壁の外の人類は滅亡したと思い込ませた。――――だが人類は滅んでなどおらず、我々“ユミルの民”をこう呼んでいる。悪魔の民族と。近い将来敵はこの土地の資源獲得を口実に侵攻を開始する。それが5年前から始まった“超大型巨人”らの襲撃であると……。」





旧王政転覆における民衆へのビラの作成でも一役買った新聞屋のピュレが、今回の公開した記事の要約を暗い顔で呟いた。その隣には、あの王政転覆から結局ピュレの元で情報屋のツテを生かして仕事にありついたジルが、紅茶を啜っている。

俺とハンジ、団長補佐のナナの3人で、これから先も民衆へ情報を伝達する一端を担うこのピュレとジルと面会をしていた。





「もう記事は世に出た後だけどよ……一連の話の信憑性はどうなんだ?」





能天気に頭をかきながらジルがハンジに問う。





「――――少なくとも我々がずっと抱いていた疑問とは辻褄が合ってる。そりゃ信じたくないけどね……そんな話。」





俺達と同じ円卓にはつかず、ずっと窓の外の行き交う人々を見ていたナナが口を開いた。





「………この窓から見るだけでも、街の人々の反応は様々ですね……。ピュレさんの周りではどんな様子ですか……?」



「………様々です。そのまま受け取る者、笑い飛ばす者、未だ兵政権に異を唱え陰謀論を結び付け吹聴する者。あなた方が器具した通りの混乱状態です。」



「――――そう、ですよね……。」



「あぁでも仕方ないよ。調査報告が我々の飯代だ。情報は納税者に委ねられる。それが前の王様よりイケてる所さ。」





ハンジは現状を悲観しすぎることもなく、冷静に紅茶をすすった。




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