第175章 思惟
「――――なにもねぇよ。ただ存分にお前を愛でるのに有効だと思っただけだ。部屋は探す。希望があるなら言えよ。」
「………希望はここにいることって言ってるのに……。」
「それは却下する。」
「えぇ。」
「えぇ、じゃねぇ。その口塞ぐぞ。」
「も、もうゴチソウサマです、本当に………。」
肩をすくめたその拍子に、首元で翼のネックレスがしゃらん、と揺れた。リヴァイさんはそれを指でつまんで……少し不機嫌そうに、眉を寄せた。
「――――外せよ、これ。」
「嫌です。」
「即答かよ。」
「これは……ダメ。このピアスと同じで、私の一部だから……。」
「ちっ。」
「――――部屋のことは譲歩しますから、これは譲歩、してください……。」
「――――しょうがねぇな。」
ふん、と鼻を鳴らして、リヴァイさんはどさっと体をベッドに投げて私に背を向けた。けれど何かを思い出したようにぴく、とこちらを振り返って―――――また私をその腕に抱いて、目を閉じた。
――――あの日の約束を、覚えてくれているんだ。
3年経ってもまだ。
それが嬉しくて、愛おしくて、その胸に顔をすり寄せて―――――……甘える。
「――――ありがとうリヴァイさん……。」
「――――寝ろ。」
「うん………。」
私は涙をこらえつつ目を閉じる。
こうやってこれから、毎日温かい夜を過ごすことになるのだろうか。
それならそれも――――……
悪くない。