第15章 相愛
「無事戻れてなによりだ。予定では昨晩帰着としていたが、何かあったのか?」
私とリヴァイ兵士長は帰着が遅れたことを報告をしに団長室に来ていた。まさか、寝坊したから帰れなかったとは言えず俯く私をよそに、リヴァイ兵士長は平然と嘘をつく。
「連絡もできず悪かった。昨晩の大雨で、道中の橋が決壊していた。迂回するしかなく、時間がかかってしまってな。」
「そうか。それは災難だったな。ナナも……ご家族に訃報を伝えるのは、胆力がいったろう。ご苦労だったね。」
「いえ………。」
伏せていた目線を上げると、エルヴィン団長とわずかに目があった。
「………しかも体調が悪そうだが……大丈夫か?」
「は、はい………問題ありません。」
私はエルヴィン団長に顔を向けないまま一礼をした。
「それならいい。あぁそうだリヴァイ。目を通して欲しい書類が山積みだぞ。今日中に頼む。」
「……ちっ………了解だ。」
「それとナナ。これから大規模な作戦に調査兵団が関わることになっていてね……。その際の医療体制について、君に相談したいことがある。夕食後で構わないから、時間をもらえるかな?」
「はい、承知しました。団長室に伺えばよろしいでしょうか?」
「ああ、頼むよ。」
私たちは団長室を出て、それぞれの訓練に合流した。
「おかえり、ナナ。」
「リンファ。」
空高くから、立体機動を使いこなして軽やかにリンファが降りてきた。ますます彼女の身のこなしは洗練され、まるで風の精のようだ。思わず見とれてしまう。
「大雨で大変だったろ、お疲れさん。」
「ううん。………アルルのお父様に……会えたよ。」
「………良かった。両親の元に、帰れたんだね………ありがとう……。」