第169章 涙雨
久しぶりに一人でゆっくり浸かるお風呂は、心がほぐれる。………けれど、リヴァイさんが浸かったお風呂だ、と思うと……なぜか少し緊張してしまう私は変かもしれない……。
頭を違うことに持っていこうと、軽く頭を振って別の事を考える。
「――――ロイ、遅いな………。」
浴室の小さな窓から、もしかして馬車が着く音がしないかな、と期待を込めて耳を澄ませてみる。
――――と、ゴロゴロ……と遠くで、好ましくない音がした。
「………かみなり………。」
雷は、苦手だ。
まるで空が……神様が起こってるみたいで怖い。
音も、光も……私の心臓と身体を震わせるから。
やがて雨の匂いと雨音が近づいてきて、髪を洗っている間に、気付けば大雨になっていた。
「――――お昼間は良い天気だったのにな………。」
あまりに降り続くと嫌だな、明日はリヴァイさんが行きたいと言ってくれたから、茶葉のお店に……おばさんに会いに行こうと思っているんだけど……。
こんなに強い雨じゃ、外に出るのも億劫になってしまう。
はぁ、とため息をついたその瞬間に、ドォン!!と響くような落雷の音がした。
「きゃぁっ!!」
耳を塞いで身体を縮めながら、チラリと窓の外を見る。
――――とにかく、早く出よう。
私は髪と体を急いで洗って、そそくさとお風呂を出た。
「――――あら、珍しく早いですね?」
「うん………。」
お風呂から上がった私を見たハルはすぐに理解した。
「ああ、そうか……急に鳴りましたね、雷。」