第168章 緒
「――――リヴァイ様……。」
「――――あ?」
「大変無礼で、不躾かと承知で……どうしても、あなたに聞いて欲しいことがあります……!」
ハルはメイド服のエプロンをギュッと握り締めて、苦渋の表情で俺に何かを伝えようとしている。
「――――なんだ。」
「――――お嬢様を手放されるまでに、わたくしの知り得ない葛藤も、迷いも、色々とあったのでしょう……、わたくしは何も存じません……。そのくせに、手前勝手なのは承知で、でも……エルヴィン様が亡くなられた今、あなたにしかもう、縋れるものがない………!」
「――――………。」
「どうか………どうかお嬢様を………わたくしの光を………守って…………。」
「……………。」
ハルも気が気じゃねぇだろう。
それでなくてもナナが調査兵団に身を置いているだけでも危険度は高い、にも関わらず……ナナの病気にエルヴィンの死……そして、絶望的なこの島の置かれた状況。
「――――前にも言った。ナナは、俺が守る。」
俺が当たり前だと小さく答えると、ハルは安堵したように俯いて、感謝の言葉を絞り出した。
「――――ありがとう………っ……。」
――――ハルにはそう言ったが、以前の俺の言う“守る”の意味とは少し違う。
傷一つつけず、欲と切り離して、まるでナイトのように綺麗に守るという意味じゃなく……決して死なせないという意味でもなく……あいつが望む生き方が出来るように側にいるということだ。
――――そう、決めた。
そして俺の望みも、諦めない。
―――――そう、決めたんだ。