第165章 明暗
火葬の儀の翌日の朝。
私はハンジ団長の部屋で、ハンジ団長とリヴァイ兵士長にエレンの父……グリシャ・イェーガーが残した手記を見せてもらっていた。
ハンジさんが辛い、と呟いたその言葉の中に、“この世界の真実”が含まれていたことから――――……より残酷な真実だったのだろうと、覚悟はしていた。
けれどいざその手記を見て、私はその内容に驚愕した。
―――――エルヴィンのお父様の……アランさんの仮説は……正しかった。
エルヴィンの追い求めた真実は―――――……外の世界は………彼の頭の中で描いていたそれと……私が夢見たそれと……そう大差なく存在しているということが、わかった。
イェーガー先生の手記に出て来た“飛行船”。
いつかエルヴィンが木陰で空を指さして言ったあの言葉が蘇る。
『――――海の向こうの地では、この空を“飛行船”が飛んでいるのかな。』
そうなんだって、エルヴィン……、本当にそうなんだって。
地を走る乗り物も、空を飛ぶ乗り物も。
エルヴィンが『それはいいな』と言ってくれた――――……“その瞬間を切り取るもの”も。
手記に挟まれたそれをぴら、と手に取る。
“写真”というらしい。
写真には若かりし頃のイェーガー先生と……金髪の女性。
そして……金髪の巻き毛が可愛らしい、昏い目をした小さな男の子。
この小さな男の子がなぜこんなに昏い目をしていたのか。
たまたま機嫌が悪かっただけかもしれない。
けれど私にはとても―――――……根深い闇を宿しているように見えて……その理由はまた後にわかることになる。