第162章 葬送
エルヴィンを――――憎く思っている、人がいた……。
死ぬと分かっていて兵を率いたエルヴィンを………生き残った彼が、憎く思うのは……わからなくはない、それだけ酷い有様だったのだろう。
その話を聞いても、私にはなにも出来なくて、謝ることしか……できなくて。
しかも私は思ってしまった。
“出て行って”
“エルヴィンとの時間を、邪魔しないで”
仲間の苦しみを受け止めることすら放棄して、今日だけはエルヴィンの側で――――泣きたかった。
「――――ナナ、エルヴィンとの別れは済んだのか?」
ぼんやりとする思考の中、私はまた結局リヴァイさんに迷惑をかけている。―――――助けて、くれた………。
「――――は、い……。でも………もう少しだけ、ここにいたい……。」
「――――そうか。フロックももう戻っては来ねぇだろう。1人で大丈夫か。」
「大丈夫…です……。……ありがとう、ございます………。」
きっとリヴァイさんは私とエルヴィンを2人にしてくれようとしたんだろう。私が棺の側に寄って座り込んだ事を見届けて、安置場所を去った。
――――でもきっと、その扉の向こうで……待ってる。
そんな気がする。
エルヴィンの棺に寄りかかって、また小さく歌を歌う。
―――――彼が好きだった、外の世界に想いを馳せる歌。歌いながら指先で小さく彼の周りの花をつまんでは――――、ひらり、ひらりと舞わせる。
――――こうやって花の命を与えたら、あなたの命が満たされて――――……戻って来たらいいのにと、おとぎ話のようなことを考えながら。
「――――………。」