第160章 虚無
「エルヴィンが……前に……叱ってくれたから……『立て』って……。『泣いてる暇はない、君のやるべきことはなんだ』って………だから………私………。……ねぇ、リヴァイ、さ………私、………頑張れた、かなぁ………っ………?」
「――――………。」
「――――エルヴィン、褒めて……っ……くれる、かなぁ………?」
「――――………。」
「――――もう、泣いても――――……いい……ですか……っ……?」
「――――………。」
あまりに悲痛な声に、思わずナナの腰と背中に手を回して身体を強く強く抱く。その反動で、ナナが必死に堪えていた涙が零れ落ちた。
一度堰を切ってしまえば、次から次からとめどなく、その頬を濡らした。
「――――いやだ……っ……いやぁああああぁ……っ………。」
「―――――――ナナ。」
「いや……っ……、置いて、行かないで……っ………!」
「―――――――ナナ………。」
「約束、したのに――――…っ……帰って、来るって、言ったじゃない……っ……!」
――――こんなにも苦しい。
お前の悲痛な顔は。
声は。
涙は。
ナナがエルヴィンから学んだことを律儀に守って、愛する者を失ってもなおその悲痛で苦しい、泣き喚きたい想いを封じながら、調査兵団の一員として自分の役割を全うしようとした。
それが今ようやく解かれて――――、全ての感情が押し寄せている。
「――――あぁぁあああっ……。」
引きつるような呼吸に変わる。
感情の許容範囲を超えたのだろう。
「………うぅ…っ……ひっ………あぁ、ぁ…………。」
「――――ナナ、言え。俺にどうして欲しい。何ができる。」