第160章 虚無
彼らを見送ってから二度目の星空を見上げて、膝を抱いて歌を歌う。
――――少し、ぼんやりする。
病が進行している?……強めの貧血の症状が出ている。
うまく立ち上がれそうにない。
でも大丈夫。私の身体は正直だから。
みんなが帰って来て、また笑い合えたら――――……すぐに良くなる。
そんな単純な私を、あなた達は笑う?
誰もいなかった壁上に、人が上がってくる音がする。
――――ああそうか、駐屯兵団が……調査兵団の帰還を受け入れる準備をしているんだ。
さすがに寝転んだままじゃいけない、気だるい身体になんとか力を入れて、起き上がった。ちょうどリフトから上がってきたその人は、すぐに私に気付いた。
「――――ナナ。」
「……ピクシス司令……!」
私は慌てて立ち上がり、敬礼を―――――と、思った、のだけど。ぐらりと視界が揺れた。
気付けば膝から崩れるようにして――――……座り込んでしまっていた。
「なんじゃ?……どうしたナナ!」
ピクシス司令よりも先に、補佐官のアンカさんが駆け寄って来てくれた。
「ナナさん!!――――酷い顔色………!」
「――――いかんな。アンカ、すぐにナナを病院に――――。」
「いいえ……大丈夫です。ここに、いたいんです……。」
私が朦朧としつつも強く発したその言葉に、ピクシス司令は察して下さった。わざわざ私の側に来て膝をついて、私をなだめるように優しく言葉をかけてくださる。