第158章 ウォール・マリア最終奪還作戦⑤
兵長の方へ群がって行った巨人が、次々に倒れては朽ちていく。
「すげぇ……とんでもねぇな、兵長……っ……!」
俺も負けてられねぇと、俺に目もくれない巨人共を背後から急襲する。20体近くいた巨人共が、もうあと数体だ。
数体の巨人と刃を交える中、ようやく兵長に声が届く所まで来た。
「――――兵長!!!あの四足歩行を追いますか?!」
「――――追う!!」
「――――なら後は俺が!!行って下さい!!!」
「――――恩に着る!!死ぬなよ、サッシュ!!」
「はいっ!!!」
獣の巨人が命じたからか、俺には見向きもしねぇが、ちょうどいい。兵長が壁に向かって移動を開始すると、面白いように巨人共はついて行く。
それを俺が後ろから―――――狩る。
兵長は一番遠くにいた巨人にアンカーを刺して、高速でワイヤーを巻き取った。
とんでもねぇ速さでその巨人に距離を詰めると、その巨人は兵長に向かって獲物を捕らえようと手を伸ばした。その瞬間にアンカーを抜き取り、体を捻ると同時にガスをふかして軌道を変える。
ひらりとその手をかわしたまま、猛スピードで得た慣性とガスを使ってあっという間にギリギリまだ建屋が残る街の残骸の方へ消えた。
「はっ………、速すぎだよ。あんだけ巨人をぶっ殺しておいて、どんな体してんだ……。」
兵長を見失って僅かに足が鈍ったあと数体の巨人共が、ようやく俺に標的を変えた。
「――――そういやミケ分隊長は……9体だったか?同時に相手にしたって言ってたな………。俺も分隊長だからな!!!舐めんな、俺だってこのくらい―――――……やってやる!!」
兵長を見送って、残り7体の巨人に刃を向ける。
なぜだろうな、全然怖くない。
俺ならやれると、信じきることができたんだ。