第157章 ウォール・マリア最終奪還作戦④
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―――――地獄絵図だった。
特攻していく仲間たちが漏れなく被弾しては―――――原型を留めないようなバラバラのパーツになって散らかってる。
そして―――――俺は見た。
エルヴィン団長が、凶弾に倒れた瞬間を。
「――――ナナ……ッ………!」
またあいつの大事な人が死ぬ。
悔しい、俺にもっともっと力があったら。
リヴァイ兵長くらい強かったら。
状況はもう少し変えられたかもしれない。
エルヴィン団長が死なずに済んで―――――ナナも泣かずに済むかもしれなかったのに。
――――いや、そんな“もし”を並べたところでなんの解決にもならねぇんだ。むしろそんなことで集中力を切らすな。こういう作戦だっただろう。
リヴァイ兵長の片翼を任されたんだ。
それに………兵長が生きて帰ってくれたら、きっとナナは兵長の側でちゃんと泣ける。
ちゃんと大事な人の死と向き合える。
――――尚更、絶対に足を引っ張る事だけはしない。
そう固く誓って、壁伝いに包囲網のように配置された大型の巨人の群れに近付く。
――――獣の巨人に辿り着くまで……何体いんだよ……ゆうに30体はいるだろ。
「――――はは……俺のこれまでの討伐数の半分もいるじゃねぇかよ……。」
ぶる、と一瞬体が震える。
いやこれは恐怖じゃない。
武者震いってやつだ。
そう思い直す。
「これ全部討伐したら……っ……、副兵士長とかに、してくれって……言ってやるからな!!」
虚勢を張って、俺は一番壁側に間抜けな面で突っ立っていた巨人に向かってアンカーを刺した。圧倒的に兵長が早いから、俺はあくまで……巨人の数を減らすぐらいの役にしか立たねぇかもしれないが。
それでも、兵長からの指名だ。
必ず応えて見せる、期待に。
「――――やってやらぁ!!!」