第14章 疎通 ※
曇天の空。私はアルルの遺品を大事にバッグに入れ、厩舎へ向かった。そこには、リヴァイ兵士長の姿があった。
「おはようございます。」
「ああ。」
私とリヴァイ兵士長は馬を連れ、兵舎の門を出た。馬に跨り、リヴァイ兵士長の後を追走しながら流れていく街並みをチラリとみると、久しぶりの街は以前よりも活気がなく、人々の疲弊が見て取れるようだった。これから人類は、どうなってしまうのだろうか。
広大な土地を失い、それにより住む場所も、食料も、衣料も、全てが不足してこの狭い折の中に人類がひしめき合っている。
この先、人類同士の奪い合いや殺し合いが起きるのは目に見えている。私たち調査兵団が壁を奪い返さなければ、近いうちに必ずそれは現実となるだろう。
私は眩暈のするようなその事実から目を背けるように、街から目を逸らした。
ひたすらに前を駆けるリヴァイ兵士長を見つめる。すると、ふとリヴァイ兵士長が振り返った。反射的に背筋が伸びる。
「おい。」
「はっ、はい!」
「………俺が後ろにつく。お前は前を走れ。」
「はい、………わかりました………。」
リヴァイ兵士長は速度を落とし、私の後ろにまわった。後はまかせられないということだろうか……その意図を汲み切れぬまま、馬を走らせた。
それからどのくらい経っただろうか。ようやく目指していた町に辿り着いた。私たちは、アルルのご両親から贈られてきた手紙に押印されている地名からこの町へ来たものの、それ以上の手がかりはない。
混沌のこの状況で、避難民一人ひとりの居場所など把握することができないからだ。
投函されたであろう場所の近辺で聞き込みをするが、なかなか足取りは掴めなかった。なんの情報も得られぬまま日が傾いていた、その時。