第152章 可惜夜
「――――君一人を残して死んだりしない、みんな。」
「――――本当に………?」
「――――本当に。」
「――――絶対………?」
「――――あぁ、絶対だ。約束する。そして俺は――――君の側にこの先も、ずっといるよ。」
「――――うん………。」
わかっているんだ、絶対なんてないと。
何事もなく全員が無事に帰着することなんて、可能性としては0に近い。誰が死んでもおかしくない局面になる。
無論、俺も。
それでもこの刹那に、君の泣き顔を見たくない。
安らかに微笑む君を抱きたくて、饒舌に――――願望を孕んだ嘘をつく。
俺が自分勝手なのは今に始まったことじゃないだろう?
許してくれ。
束の間の幸せな時間を享受するために………やがて来る残酷な未来を君に見せないように、ヴェールをかける俺を。
「――――ナナ。行こうな、いつか。外の世界に。」
「うん……約束……。」
お互いの体温を感じながら微睡むその時に、微かに小指を絡めた小さな約束を交わす。
ナナは安心したように眠った。
そんなナナを抱いて、俺も眠りにつく。
柄にもなく―――――、もしこのまま永遠に目が覚めなくても幸せかもしれないと、馬鹿げた妄想をしながら。