第150章 恵愛 ※
「――――ねぇ、エルヴィン………。」
「――――ん………?」
「私が死んだら、私の生きた、意味は……エルヴィンが与えてね……。」
私の言葉に、エルヴィンが珍しく言葉を詰まらせた。
「………ああ。引き受けよう。」
「エルヴィンの生きた、意味、は………。」
「――――俺が生きた意味は、俺が死んでから――――引き継いだ仲間が与えてくれるだろう。……だが、生まれて来た意味はもう見つけてる。」
「え……?あっ………。」
エルヴィンは私の背中に腕を差しこんで身体を起こした。向かい合って、繋がったまま対面で座るような恰好だ。睫毛の触れる距離で―――――彼は囁いた。
「――――俺は、君を愛するために生まれて来た。」
「……………。」
まっすぐに私を見つめるその蒼は、今まで見たどの蒼より透き通って曇りも陰りもない。
ただただ美しくて、強かった。
「――――君の生まれた意味もまた――――……俺に愛することを教えるためだったならいいのにな。」
願望を含むように告げられたその言葉に、私はなんと返せばいいのか……思考力もなにも奪われた状態で、熱っぽく彼を見つめることしかできなかった。
「――――この世に君が生まれて来てくれて良かった。―――誕生日おめでとう、ナナ。」
「――――んっ………。」
ありがとうすら言わせてもらえないまま、また唇を塞がれて―――――、あとはもう、意味のある言葉すら発させてもらえないほどに愛されて愛されて愛されて―――――、その深く大きすぎる愛をこの身に受けて、まるで本当に溶かされるような、死んでしまいそうなほどの幸せに包まれたまま、眠った。
私の居場所は――――
激しくて
温かくて
愛しくて
切なくて
幸せで―――――……
いつもそこには必ず、彼の香りがある。
―――――病だって乗り越えて見せるから。
あなたといつか外の世界に行くために。
――――――だからずっと、側にいて。