第149章 縁
「………今からお風呂だけど、リンファと一緒によく入りました。」
「!!」
「一緒に入ります?」
「!!ばっ、馬鹿じゃないのか!!入るわけないだろ!!!」
「あはは!!!」
「……………。」
思わず大きな口を開けて笑ってしまった私を見て、アーチさんは少し疎ましそうな目を向けた。
「………明日の夕食は、午後7時に食堂で。」
「………は?」
「………だって毎日のようにリンファと晩御飯食べていたから……そこは付き合ってもらえますよね?」
「………ま、ぁ………いいけど………。」
「――――ふふっ……。嬉しい。」
私がリンファを胸に描きながら零した“嬉しい”という言葉を聞いて、アーチさんは目を見開いた。
「――――リンファのこと、今でも思い出しますか……?」
小さく呟かれた問いに、俯いて首を振る。
「――――思い出すどころか………忘れた事なんてないです。私にとって調査兵団全てに、彼女と過ごした大事な時間が――――詰まってるの。」
「――――そう、ですか………。」
アーチさんは初めて、微笑んだ。
その顔は幼くて、優しくて、今にも泣き出しそうだ。
――――一人の憧れた女性をここまで想い続けることができる、他者の目線で見たもの、感じた事を理解しようとする………こんなにも、優しい人だ。
「――――リンファが愛した調査兵団に、ようこそ。アーチさん。」
私はその夜、屋上で月を見上げてリンファに話しかけた。
「リンファ……アーチさんはもう大丈夫だよ。きっと。」
細い下弦の月。
細い細い月なのに、やはり暗闇にいつだって光を灯してくれる私の拠り所として、見守るようにそこにいる。
これからの調査兵団の行末をどうか見守っていて。
あなたに会いに行ける日は―――――、そう、遠くないかもしれない。
本当なら絶望の淵で抱くその思いも、全く怖くなくて―――――
私は外の世界に願いを込めて、歌を歌った。