第149章 縁
エレンの硬質化の実験から一週間後には、あの時ハンジさんが構想した巨人自動伐採機――――もとい巨人の処刑台が完成した。
それはトロスト区の――――かつて超大型巨人に蹴破られた、あの悪夢を見たその場所に作られた。
長い長い年月が絶ったのかと思うほど、これまでに色々あったけれど……実際まだ2ヶ月弱しか経ってない。
思い起そうとしなくても――――、その壁の穴を見れば、一瞬で記憶が蘇った。
突如壁の上に現れた大きな目。
壁上固定砲を一掃したあの轟音と、壁を蹴破られて――――一瞬で人と街を壊滅状態に陥れた……飛来する壁の破片と、その後を追うように侵入してきた巨人たち。
私を含め、あの瞬間トロスト区にいた104期の面々は――――一瞬、小さく息を飲んだだろう。
――――簡単に消せるような悪夢じゃない。私もまた、頭を過った過去の悪夢に、ぶる、と身震いした。
エレンの力で、壁にギリギリ人が入れる空間を形成した。その人を捕食しようと手を伸ばし、首を差しこんで来る巨人を、壁上から高さをつけて丸太を鉄材で補強した重量物が、垂直に巨人の無防備な項に直撃するという仕組みだ。
今日はその装置を試行するために、新聞記者の面々も集まっていた。ハンジさんの構想通り、その罠に引き寄せられたのは12m級の巨人だった。壁の隙間にいる捕食対象に気付いたその巨人は必死に手を伸ばすも届かないとわかると、無理矢理頭をねじ込もうとした。
その瞬間、ハンジさんの号令が下される。
ジャララララララ、と鎖が勢いよく解放される音が鳴り響き、ドンッ!!と巨人の項を直撃した。
「やった!!!項に当たったぞ!!損傷の度合いは悪く無さそうだ……今度こそは……!」
ハンジさん、そしてその横にモブリットさんと――――、エレンと、リヴァイ兵士長。
ぐったりと倒れ込んだ巨人が、これまでの何度かの試行では当たる場所が悪かったり、重量不足などで……すぐに回復してしまい、命を絶つことができなかった。
――――しかし今回は……損傷した項からしゅううううと蒸気が上がり、巨人の身体が消えて行く。
―――――成功したんだ……!