第2章 変化
あれから一年が過ぎようとしていた。
毎月最後の木曜日の朝、リヴァイさんは必ず時計塔に来てくれるようになった。相変わらず笑わないし、いつもどこか不機嫌そう。
ワーナーさんの家への道中は、会話をするでもなく、ただ私の前をスタスタと歩いていく。でも、早くて追いつけないことは一度も無かった。私の歩くスピードに合わせ、時折チラッと私の方を振り返る。それがリヴァイさんの、とってもわかりにくい優しさだ。
その日も、私の前を行くリヴァイさんの後ろ姿を追おうとしたところ、彼はすぐに振り返った。
「………おい。」
「………はい……どうか、しましたか?」
「俺の横を歩け。」
なぜかその日は、リヴァイさんが私の横を歩いてくれた。初めて見上げる横顔は、鋭く切れ長の目に少し黒髪がかかり、見とれてしまったのを覚えている。
じっと見つめすぎたのか、視線に気付いたリヴァイさんと目が合った。私は恥ずかしくなって、慌てて目を逸らして前を向いた。
「………そのまま前を向いて、落ち着いて聞け。」
「え……?」
「尾けられてる。」
「………!!」
予期せぬ言葉に、背筋がゾッとした。なぜ?誰が?何のために?ああ、ワーナーさんがいつか言っていたっけ。誘拐されてしまうって。ここは、危険な場所だったんだ。
「一人だ。巻く。掴まってろよ。」
「え―――――――――。」