第148章 其々 ※
次の日、私はハンジさんとの約束どおりエレンの硬質化実験に同行した。
シガンシナ区の壁に空いた穴を模した岩山の隙間を、巨人化したエレンが埋めるという、実践に即したものだった。
――――あっけなく、当たり前のようにエレンはそれをやってのけた。
私は初めてその様子を目にして、鳥肌が立った。
――――取り戻せるんだ。
ウォール・マリアを。
恐怖のどん底に突き落とされたあの日から5年……色んな事があった。まだライナーもベルトルトもユミルも、そして獣の巨人という新たな存在も………何一つ解決していないのはわかってる。
でも……ここまで来たんだ。
25万人が無残に死んだ名ばかりの“ウォール・マリア奪還作戦”とは違う……本当に取り返すために、私たちは着実に近づいている。
硬質化で石像のようになった巨人体のエレンの項から、エレンは自分の意志で出て来た。
そして出て来ても、硬質化した物質は消えない。
――――何度見ても理に反した、目を疑うような光景だ。
私は興奮のあまりエレンに駆け寄った。
「――――エレン!!」
「………ナナ………。」
「見たよ、凄いね……!もうこんなに使いこなしてるの……?」
「……いや、もっと精度を上げなきゃ……!」
「体は大丈夫……?」
「ああ、大丈夫。ありがとう。」
心配してエレンの顔を覗き込むと、エレンは問題ない、と微かに笑みを見せてくれた。リヴァイ兵士長が実験でも相当エレンは体力を消耗していたって言ってたから心配したけど……顔色もまだ悪くはない。
ここから、力を使い続けて行った時に……気を付けておかないと。
そして私は小さな疑問をエレンにぶつけてみた。