第147章 同憂
ロイの処遇が決まった。
兵団内の多くの意見が、『疫病対策へのいち早い施策と特効薬の開発は、何事にも代えがたい人類への貢献である』と一致。
旧体制幹部との関わりもロイは全て正直に話したが、それでも旧体制の強い干渉の中、疫病の強毒化をなんとか踏みとどまらせたことなども、ロイの減刑に大きく作用した。
結局のところ、これまで通りその疫病への知見を活かした特効薬や予防薬の開発を兵団指揮・監視下で行うことに決まった。
ようやく地下牢から解放されたロイは、研究所の準備が整うまで同じく兵団本部に数日とどまることになった。
「ロイ!!!!」
「姉さん。」
ロイに駆け寄ってぎゅう、と抱きしめると、思いもよらずロイが顔をしかめた。
「ちょっと走らないでよ。転んで怪我でもしたらどうすんのさ?」
「過保護すぎるよ。」
「―――検査結果、どうだったの。」
間髪入れずにそれを問う。やっぱり随分と気にしていたんだろう。私はとにかくロイを自室に連れて行って、今までの事を話した。
ロイは―――――顔面蒼白と言うに相応しいほど、この世の終わりのような顔をした。
「ちょっと待ってよ………とんでもない病気じゃないか………!」
「そうだね、珍しいかも。」
紅茶を淹れながら、ふふ、と笑うと、ロイは怒りを露わにした。
「なんでそんなに悠長にしてるの?!さっさと入院して、治療に―――――!!」
「私がここに居るって決めたの。」
「は………?」
「今のところ元気だし、進行も遅い。病院に居たって治るとは限らないし……、今すごく安定してるから大丈夫。」
「大丈夫じゃないだろ!!」
どん、とロイが怒りに任せてテーブルを拳で打った。ガチャンと紅茶が跳ねて、テーブルにじわりと広がる。
ごめんね。
わかってるんだけど。
――――ロイが嫌がるって。
でも、私の生き方は私が決める。