第146章 食欲 ※
「狩猟で生計を立ててるって、食べる為だけに狩るんじゃないんだね。」
「そうですよ!まぁもちろん自分達でも食べますけど、ほとんどそれは……売り物として出せない部位とかですね。」
「売り物として出せない部位……。」
「内臓とか。」
「食べるの?!内臓を?!」
「美味しいですよ、意外に。」
「そうなんだ………。」
動物の肉の部分以外を食べるという事実を初めて知って、私の知る世界がいかに狭いのかと驚いた。
「――――でもまぁ確かに内臓には栄養も豊富だし……きっと肉の部分より腐りやすいから、狩ったその人たちしか食べられないものなのかも。」
「そりゃもううめぇもんで!でもやっぱり肉は特別で……普段からそげに食べられるもんじゃな……!」
サシャが上機嫌に話し出すと、聞いた事のないイントネーションの言葉が飛び出した。
驚いて目を丸くすると、サシャがしまった、といった顔で顔を真っ赤にして俯いた。
故郷の訛りのようだ。
私はふふ、と笑って一言、呟いてみる。
「Be yourself.」
「――――え?!」
サシャは聞いた事もない言葉に反応して、思わず顔を上げた。
「な、なんですか今の……?」
「古の言葉。面白いでしょ?私もつい、感情が昂ると出ちゃうの。同じだね。」
「なんて、言ったんですか……?」
「――――『あなたのままでいい』。」
私が伝えると、サシャはぐ、と感情を押し込めたように目を少し潤ませて下唇をきゅ、と噛んだ。
「………かなわんはずやなぁ……。」
「ん?サシャは今なんて言ったの??」
「――――ナイショです。」
「えぇ。教えてよ。」
「じゃあまた………こうやってお茶、呼んでくれますか?」
サシャが少し照れたように俯いて、チラッと私を見上げて言う。私は嬉しくて、心からの笑顔で応えた。
「―――――もちろん!」