第145章 慈愛
「ハハハハハハハ!!どうだー私は女王様だぞーー?!文句あれば―――――。」
「?!?!」
「?!?!」
「?!?!」
ヒストリアの虚勢よりなにより、104期の面々は目を疑うような光景を目の当たりにして――――兵長に怒鳴られるより、睨まれるより、怖かった。
「ふふ………お前ら、ありがとうな。」
――――兵長が、物凄く優しい顔で、笑ったんだ。
そしてすぐ、ナナのほうに振り返ると、その頭をさらっと撫でた。
「―――ナナ、この後の会議の資料を揃える。手伝ってくれるか。」
「―――はい、喜んで。」
その2人を見て理解した。
きっと――――リヴァイ兵長は、ナナには今の笑顔を向けるんだ。
その顔も、髪への触れ方も、ひとつひとつがナナへの愛情を物語っていて………それを見つめるナナの顔も、どこまでも優しくて。
分かった気がした。
ナナは――――、エルヴィン団長の恋人、だけれど、間違いなくリヴァイ兵長のことも愛しているんだ。
でなけりゃ、こんな顔ができるわけない。
――――とても綺麗で可愛くて――――……恋をしている少女のようだった。
「――――人類最強って……むしろナナなんじゃ………?」
ぼそっと胸の内を零すと、こぞってみんなが同意した。
「………僕も、同じ事を思った………。」
「俺も。」
「団長にも同じ顔をさせてましたよ、ナナさんは。」
「クソ可愛いもんな、仕方ねぇよ。」
「あの兵長が笑った………ナナさん、すごい………。」
「…………。」
俺達はエルヴィン団長とリヴァイ兵長とナナの不思議な関係性に妄想を膨らませつつ、2人が連れ立って去って行く背中を見つめた。
――――あぁどうやら本当に、俺の想いはどうやっても実らないみたいだ………。