第142章 初口
「リヴァイさん……?」
「……なんだ。」
「――――初めてを私に、ください。」
「あ………?」
「あなたをフルネームで呼ぶ、初めてを。」
「――――………。」
ナナはその大きな瞳で俺を見上げて、愛おしい名を口に出すように、一音一音大切に俺の名を呼んだ。
「リヴァイ・アッカーマン……兵士長。」
「…………。」
「………とても、すてきです。」
――――お前が呼ぶ俺の名は、なぜいつもこんなにも特別なのか。
「――――……。」
「どうしました?やっぱりどこか辛いですか?診ましょうか……?」
俯いた俺におろおろとしながら、心配そうに眉を下げて俺の顔を覗き込む。
ほら、いつもお前は隙だらけだ。
「――――もう一つやるよ。リヴァイ・アッカーマンとしての初めてを。」
「え?」
その唇に、触れるだけの、キスを。
「~~~~~………。」
ナナは顔を真っ赤にして、手で口元を押さえた。
エルヴィンに見られたら、知られたらどうしようと思ってる顔だ。
――――だが、まんざらでもない顔。
お前はいつも俺を乱すから――――、
たまにはいいだろう?
俺がお前を乱しても。
―――――なぁ、ナナ。