第137章 革命
ピクシス司令との密会も済んで、街の喧騒の中に紛れて一旦お母様のところへ帰ろうとしたその時―――――、腕を掴んで引かれ、路地の奥へと身体が押し込まれた。
「?!?!」
ダミアンさんにバレた?追手……?
それともまだ私を諦めていない中央憲兵―――――……。
そう思いながら、恐る恐るその腕を引いた男性の方を見る。―――――誰。知らない人だ。
「――――やっぱりじゃねぇか。お前……ナナだろ。」
「………ナナ?誰ですか、それ……。そして、あなたは誰……?」
「――――ああそうか、はいナナです、とは言えねぇわな。色んな奴から追われてっしな。」
その若い男性はいわゆる――――チンピラ、と世間で言われそうな若者の恰好をしている。
けれどなんだろう……聡い。
「――――リヴァイ兵長に雇ってもらってる。情報屋のジルだ。」
「!!!」
リヴァイ兵士長と繋がっている人。
いやでも……本当かどうか信用できる材料がない。そう思って一度目を逸らして黙った。……昔の私なら、リヴァイ兵士長の名前が出ただけですぐに信用していただろうに、随分と用心深くなったものだと、小さく笑う。
「……信用できるなにか……あぁ、これ。リヴァイ兵長からの指示書を見るか?筆跡でわかるだろ。」
「………!」
手渡された小さなメモ。
それを開くと――――、いつかの手紙で見た文字。何度も何度も読み返した。
手紙がしわしわになってしまうくらい、何度も読み返して―――――筆跡をなぞってあなたを想った。
だから見間違うはずがない。
これは、確かにリヴァイ兵士長の書いた字だ。
「――――ジルさん……!ありがとうございます……ナナ、です。」
「はは、やっぱりな。改めて宜しく。」
私は差し出された手をぎゅっと強く握った。