第134章 恥辱 ※
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――――一晩中望まぬ行為を求められ続けて、ナナは明け方にはただ人形のように、公爵の玩具に成り下がっていた。
自慰行為を強いられようとも、
欲に塗れた肉棒を喉の奥に突き立てられようとも、
自由を奪われて蹂躙されようとも―――――、
何をされても従順に応じたのは、エルヴィンの、調査兵団の命を盾にとられたからだ。
ナナが眠るその顔には、涙と涎の痕がついていて――――歪な笑みでそれを見下ろした公爵は、シャツを羽織って部屋を出た。
扉がぱたん、と閉まった音と――――金属製の鍵がかけられる音と共に、ナナは―――――そっと目を開けた。
しばらくしてその部屋の主が戻ってくる。
扉の鍵を開けて、ピッチャーに入れた水とグラスをサイドテーブルに置く。
ベッドで背を向けているナナを満足げに見下ろした彼は、その目に飛び込んできた光景に思わずグラスを落として―――――グラスはその場で砕け散った。
「――――ナナ………?!」
ベッドの上に、薔薇のように赤い模様が散っている。
背を向けたナナの肩を掴んで身体を返すと―――――、意識のないナナの口から吐き出されたのであろう真っ赤な鮮血。
目はうっすらと開いているものの、朦朧と焦点が合っていない。
時折、おかしな呼吸と―――――びく、と身体を痙攣させている。
「ナナ!!!!!!……っ……誰か、誰か早く馬車を!!!病院に搬送しろ!!」
普段どんなことが起きても取り乱すことのないライオネル公爵が慌てふためいて使用人を呼びつけた。
その様子から、少なからず彼がただの慰み者として、壊れればそれまでの玩具としてではなく、それなりに歪であれども愛情を伴ってナナを手に入れたかったのだと――――その場の誰もが理解した。
ナナはほどなくして、王都の元オーウェンズ病院……ボルツマン中央総合病院へと搬送された。