第1章 出会
香しい紅茶の香りの中、俺は椅子をキィ、と傾けながらワーナーとエイルが外の世界について喜々として話す様子を見ていた。
やはりこいつは、ここにいるべきではない。自身の居場所に返るべきだ。
「………おい、いいのか。もう昼になるぞ。」
夢中で書物を覗き込む二人に、声をかけた。
「………本当だ………。」
「今日はここまでだな、エイル、もう帰りなさい。」
ワーナーが黒いマントをエイルに手渡し、チラリとこちらを見た。俺は気付かないふりをした。
「……俺は今から地上に用がある。ついでに送り届けてやるから、早く支度しろ。」
「はい……!」
エイルはどこか嬉しそうに、帰り支度を始めた。
結局俺は、何の気の迷いか毎月最終の木曜日の早朝には時計塔でエイルを待つようになり、半年が経つ頃には、エイルは俺におびえることもなく、屈託のない笑顔で笑うようになった。
エイルの大きな目が俺を映すのは悪くねぇ。そう思うようになった。
じじぃにまんまとしてやられた、というわけか。