第134章 恥辱 ※
「お嬢様、本当に行くのですか?護衛の者はつけますが……体調のこともありますし、お手紙だけで済ませても良いと思いますが……。」
曇天の朝。
身支度をする私に向かって、私の髪を梳かしながらハルが眉を下げて心配そうにつぶやいた。
「ううん。あんなに沢山の贈り物を……まさか送り返して手紙だけっていうのは失礼だし……、少し――――聞いてみたいこともあるの。」
「そうですか……くれぐれもご注意くださいね。」
「うん。ありがとうハル。」
明らかに頂きすぎたお見舞いの品をお返しするため、ライオネル公爵の屋敷に出かける。
本当は少し怖い。
けれど――――違和感と言うのは総じて、信じるに値するものだと思っている。黒薔薇の花束に違和感を覚えたのなら、その違和感を確かめるべきだ。
そしてもう一つ―――――やっぱりロイが私になにかを隠している気がしてならない。それを、ダミアンさんはなにか知っているかもしれないから。ロイに言えば絶対に行くことを阻止される。私はロイが研究所に行っている時間帯を見計らって出かけた。
馬車を走らせて小一時間ほど。
王都から少し離れた静かな森の中――――……以前にも来たことがある大きな屋敷の門前で、取次を依頼する。お忙しい身の上だろう、会えなくてもいい。贈り物を直接屋敷に私が届けた、ということが大事だから。
そう思っていたのだけど、予想に反して彼は奥の屋敷からわざわざ出迎えに来てくれた。
――――いつも通りの、さらりと美しい肩までの金髪を綺麗に後ろでまとめて、ラフだけれどもセンスが良く、見ただけでわかる質の良いものを身に纏っている。