第132章 仲合
「はははっ……、そうか、あんたか。――――ナナが言った……一緒に戦いたいという『愛する人』ってのは。――――そりゃあ人類最強の色男が相手じゃ、うちのせがれは敵うわけがねぇや。」
リーブスは快活に笑って、煙草の煙をふっと吐く。
「――――中央憲兵との交渉内容と、あんたらの目的が知りたい。」
「交渉?そんなものはない。命令され従った。俺らの目的は“すべてを失わないために命令に従う”だ。しかし夜襲も拉致も失敗した。俺らリーブス商会は全ての財産を何らかの罪状で王政に没収され従業員とその家族は路頭に迷う。……おまけに俺と数人の部下は口封じのため……何らかの事故に遭って死ぬだろう。」
壁上を風が走っていくその音は、まるで悲鳴のように聞こえる。
この壁が守る住民などもうほとんどいなくて――――見捨てられた街を、この男はなんとかして人を結び付けて来た。
「一ついいことを教えてやるよ旦那。中央憲兵は頭が悪い。普段巨人相手に殺し合いしてるような連中に俺らチンピラが何とかできるわけねぇだろってんだ、馬鹿だねヤツらは。――――どうだい旦那?役に立っただろ?」
「ああ……奴らの頭は足りないらしい。それは分かるが。そんな馬鹿どもに大人しく殺されていいのか?会長。」
――――噛み付く、抗うことをせずに奪われ、殺される未来を受け入れる道理がない。
命を奪われる覚悟があるなら――――、守りたいものがあるのなら、相手の喉元に食いつくつもりで戦えと諭す。
「馬鹿でも人類の最高権力者どもだ。お前らだって服すら着れねぇバカに食い殺されてんだろうが。」
「……なるほど確かにそうだ。だが俺らは巨人を殺すこともできる。巨人と同じだ。どうせ死ぬなら試してみればいい。」
「駄目だ。」
「なぜ?」
「――――失敗して死ぬ部下が増えるだけだ。」
「気にするな。どのみち同じだ。」
「……何だと?」