第129章 苦悶③
霞む視界と、砂嵐のような雑音が混じるその意識の中で、唯一はっきりとわかったのは、リヴァイさんの腕に抱かれているということだけだ。とんとん、としてもらった時のリズムと同じ――――早くて強い鼓動が、私の耳元で聞こえる。
やだ、迷惑をかけたくない。
でも―――――、体に力が入らない。
「――――ナナ、お前はもう――――ここにいるべきじゃない。」
体をぎゅ、と抱かれた気がした。
いやだ、いや。
みんなと離れたくない。
ずっと側に――――――。
左手だってあの事件から思うように動かず立体機動もままならない。
戦えない。
その上―――――ずっと身体がおかしい。
分かってる。
足手まといでしかないって。
でも、でも―――――例え死ぬとしても一緒がいい。
置いて行かないで。
離さないで。
それは私の我儘だということもわかってる。
「………リヴァ、イ……さ…………。」
「――――ロイ、頼む。」
「ええ、別室で―――――……。」
次に目を開けた時に―――――エルヴィンも、リヴァイさんもいなかったら私はどうするのだろう。
泣くのか、喚くのか。
みんなの側に、共にいられないなら生きる意味なんてない。
―――――やがて心が引きちぎられて、死んでしまうかもしれない。