第128章 苦悶②
目を開けると、確かに握っていたはずの手の温もりがなくて――――、思わず飛び起きてしまった。
「――――なんだ、どうした。どこか痛むのか?」
声のする方に目をやると、紅茶を淹れようとしてくれているのか、かちゃかちゃと食器の音がする。
「――――いえ、どこかに……行っちゃったのかと思ったら――――体が勝手に動いてしまいました。」
「……俺も付きっ切りではいられねぇぞ。」
「わかってます。ありがとうございます……。兵士長に看病いただけるなんて、贅沢です、私は。」
ふふ、と笑って見せると、扉がコンコン、と鳴った。
「―――ナナさん?フィオです。」
「フィオ?どうぞ。」
フィオは手にトレイを持っていて、そこには湯気のたったスープらしきものが乗っていた。
「お食事、食べられますか……?」
「あ、ありがとう……。まだ食欲ないんだけど、食べてみるね。」
「はい……無理せずに。でも……少しは食べたほうがいいです……。」
「うん。テーブルに、置いておいてくれる?」
「はい。」
リヴァイ兵士長に軽く会釈をしてテーブルにトレイを置いて、フィオは部屋を出た。
「―――食うか?食えるなら、ちゃんとした飯のほうがいいに決まってる。」
「………試みて、みます……。」
そう言うと、リヴァイ兵士長がトレイを持って私のベッドの脇の椅子に座った。そしてスプーンでとろとろになった野菜とスープを小さく掬って、私に差し出す。
「えっ、いや、自分で食べれます……!さすがにそこまでしていただくわけには……。」
まさか食べさせてくれようとするとは思ってなくて、首を振って遠慮する。